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大阪高等裁判所 昭和36年(ラ)234号 決定 1961年10月21日

抗告人 鹿間幸一 外一名

主文

本件即時抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は別紙のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

本件訴状によると本訴は抗告人等が原告となり、小川清吉を被告として神戸地方裁判所姫路支部に対し、賃貸借契約の解除を原因として賃貸家屋の明渡を求めるとともにこれに附帯して右家屋の延滞賃料並びに契約解除後における賃料相当の損害金の支払を求めて提起したものであることが明かである。そうすると本訴の訴額は主たる請求である家屋明渡の請求部分の価額によつて決定すべく附帯の請求である延滞賃料並びに損害金の請求部分の価額は算入すべきでないこと民事訴訟法第二三条二項によつて明白であるところ、本件訴状並びに同添附の固定資産税課税評準価額証明書によると右家屋明渡請求部分の訴額は、九八、〇二七円と認めるのが相当であるから本件訴は地方裁判所の管轄に属しないものといわなければならない。抗告人等の主張は延滞賃料四、〇一二円の請求部分も訴額に算入すべきで、これを合算すると訴額は一〇二、〇三九円となり地方裁判所の管轄に属するから本件を加古川簡易裁判所に移送する旨の原決定は違法であるというのであるが独自の見解で到底採用しえない。

尤も原審は民事訴訟法第三〇条二項により相当と認めるときは本件訴につき自ら審理裁判をすることができ又同法第二六条によつて原審に応訴管轄が生じる余地もあつたのであるから原審が昭和三六年九月二七日午後一時を第一回口頭弁論期日と指定し当事者双方に該期日の呼出手続をなすとともに被告に対し答弁書の催告書を発した以上一応期日を開き被告の応訴態度を見るとか、移送についての原告の意見を聞き原審において自ら審理裁判するのを相当とする事情があるかどうかを確めるとかして後に移送するかどうかを決定するのが相当であつたと認められるのに同年九月二日に右第一回口頭弁論期日呼出状を送達し同日突然本件移送決定をしたことは適切な措置とは認められないがこれはもとより原決定を取消す理由とはならない。

結局原決定は違法ではなく本件即時抗告は理由がないからこれを棄却すべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判官 岡垣久晃 宮川種一郎 大野千里)

抗告の趣旨

原決定はこれを取消す。

本件を加古川簡易裁判所に移送することを取消し神戸地方裁判所姫路支部の管轄に属するものと認むとの決定を求めます。

抗告の理由

本件は原告等が家賃相当損害金の滞納を催告したのに対し被告は無情にも無視したるに依り昭和三六年八月十五日民法第五四一条により解約し、原告、被告、両者の間には完全に本件家屋の賃貸借契約は無くなつたものでありますが被告は解約に至るまでの家賃相当損害金計四、〇一二円を支払はないばかりか不法にも家屋を占拠して明け渡さないので、前記金額を支払い家屋を明け渡せとの請求の主張をしたもので、家屋の固定資産税評価額九八、〇二七円と前記四、〇一二円の合計一〇二、〇三九円が訴を以て主張する利益であり、本件は神戸地方裁判所姫路支部の管轄であります、昭和三六年八月十五日以後家屋明渡し終了までの家賃相当損害金はこの請求が附帯の目的であります。

以上の理由により本件は神戸地方裁判所姫路支部の管轄に属するものと認むと決定されるのが適当であるから本件申立に及ぶ次第である。

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